デザイン思考を実践するための5つのプロセスを解説|日常生活で活用する方法も | フリーランス・業務委託採用|クロスデザイナー

デザイン思考を実践するための5つのプロセスを解説|日常生活で活用する方法も

INDEX

デザイン思考とは、デザイナーの思考プロセスを活用して、主にビジネスの課題解決につなげるための思考法です。デザイン思考のプロセスは基本となる5つのプロセスのほかにも、さまざまなデザイン会社が開発しています。

しかし、それらの思考プロセスを実務においてどのように活用すればよいのか悩む人もいるのではないでしょうか。

この記事ではデザイン思考の5つのプロセスについて解説します。代表的なものからIDEO、ダブルダイヤモンドなどについてもまとめました。

デザイン思考がビジネスシーンで利用される理由

デザイン思考はグローバル企業でも取り入れられている思考法です。デザイナーがデザインを制作する思考プロセスを、ビジネスに活用することでイノベーションを起こせると考えられています。

近年、インターネットの普及により消費活動が変化するなかで、従来の方法では思うような成果が得られなくなりました。これまで考えたこともないような創造的なアイデアが求められるようになり、デザイン思考への注目度が高まっています。

ビジネスシーンでデザイン思考が重視されている理由は、下記の記事でも紹介しています。ぜひ参考になさってください。

関連記事:デザイン思考がDXの現場で重要視される理由|推進させるコツも

デザイン思考の実践で得られる4つのメリット

デザイン思考を実践することで以下の4つのメリットが得られます。

  1. アイデアや提案の習慣化
  2. イノベーションの創出
  3. 多様性の受容
  4. 組織力の強化

デザイン思考では多角的なアイデアが必要です。そのため、デザイン思考を積極的に実務に取り入れる場合は多くのアイデアを提案してもらうために、提案への指摘や否定をされない環境を整えることが求められます。部署の序列や垣根を越えて多くのアイデアを集められることから、社内コミュニケーションを活性化させることが可能です。

さまざまな提案を受け入れることで、イノベーション創出のヒントを見つけることができます。また、多様性の受容により、組織全体でイノベーションを生み出す力を高めることが可能です。

デザイン思考の基本プロセス

デザイン思考のプロセスは、アメリカのスタンフォード大学に拠点を置くデザイン事務所『d.school※』が2005年に提唱したものが有名です。以下の5つのフェーズで構成されています。

  1. 共感
  2. 問題定義
  3. 創造
  4. プロトタイプ
  5. テスト

それぞれのプロセスについて解説します。

※Hasso Plattner Institute of Design(ハッソー・プラットナー・インスティテュート・オブ・デザイン)

プロセス1. 共感

共感のプロセスは、デザイン思考の「人間中心」を原則とした考え方において大切な工程です。

ユーザーがどのような課題を抱えているのか、寄り添いながら理解を深めて問題の核心に迫ります。漠然と考えていても理解は深まりません。

観察

ユーザーが何を考えているのか、日常の言動を観察します。SNSなどで自分の考えを発信していれば、数日間の発信を追っても良いでしょう。発信の内容から「なぜこのようなことを言っているのか」と背景を深く考えます。

関わる

インタビューなどをとおして、ユーザーと直接コミュニケーションをとります。インタビューの目的は声を拾うのではなく、インサイト(洞察)を見つけることです。ユーザーの回答には「なぜ?」と返して深い意味を聞き出します。こうすることでユーザーが本当はどうしたいのか、真の回答にたどり着くことができます。

インタビューをするときは、自身の先入観が入らないようにできるだけフラットに聞くことが大切です。

つぎに観察やインタビューをとおして得た情報を組み合わせて、ユーザーになりきって実際に体験してみます。ユーザーとして体験することで、自身では気づかなかったインサイトが見つかる可能性があります。

プロセス2. 問題定義

問題定義のプロセスでは、共感のプロセスで集めた情報を整理して、取り組むべき問題を抽出して解決策を見つけます。「なぜあのようなことを言ったのか」「なぜこう答えたのか」と、深く思考しながら情報を整理してパターンを探していきます。

ユーザーへの共感を深めていくと、ユーザーが抱えている問題をいくつか発見できるはずです。いくつか出てきても解決する問題はひとつに絞ります。「解決するにはどうすれば良いのだろうか?」と問題を定義していくことで、解決につながる具体的なアイデアが生まれてきます。

デザイン思考を組織デザインに用いるときは、「ブレインストーミング」で目標を決めるためのアイデアを創出し、「KJ法(親和図)※」でアイデアをまとめ、「免疫マップ」で目標達成を阻害する固定概念を洗い出します。

フレームワークはデザイン思考を実践するときに、思考を整理するガイドライン的な役割があり便利に活用できます。

※川喜田二郎東工大元教授によって考案された手法

プロセス3. 創造

つぎに問題を解決するためのアイデアを出していきます。新しいアイデアを出していくというよりも、これまでのプロセスで生まれたアイデアをより具体的にするために、幅を広げていく感じの作業です。

アイデアを創造するには、いくつかのフレームワークが役立ちますが、ここでは「SAMPEP法」を用いアイデアを改良していく方法を解説します。SAMPEP法のステップは以下のとおりです。

1. 代替(Substitute)

ほかのやり方がないか、新しいアイデアを考えてみる

2. 結合(Combine)

異なる要素を組み合わせて新しいアイデアを創出する

3. 適応(Adapt)

新しいニーズやトレンドにあわせて、時代や環境に適したアイデアに改良する

4. 変更(Mobify)

サイズや色などを変更してみるとどうなるのか考える

5. 転用(Put to another use)

別の用途に活用する方法を考えてみる

6. 削除(Eliminate)

アイデアから不要な要素を取り除いて新しいアイデアを創出する

7. 逆転(Reverse)

逆にしたり再構成をしたりして新しいアイデアを創造する

このステップをとおして、アイデアがより良いものになるように改良していきます。

このほかにもアイデアを可視化する「バリューグラフ※」や、ユーザーに必要な要素を把握する「顧客価値連鎖分析(CVCA)※」など、アイデアの創造に適したフレームワークもあるので使いやすいものを探してみてください。

※ スタンフォード大学元教授石井浩介氏によって開発された手法

デザイン思考に役立つフレームワークは、下記の記事でくわしく紹介しています。自社でデザイン思考を実践するときに活用してみてください。

関連記事:デザイン思考を実践するときに役立つフレームワーク10選

プロセス4. プロトタイプ

つぎにアイデアをもとにプロトタイプ(試作品)を作成します。プロトタイプはアイデアを具体化するために重要なものです。言葉だけでは認識に齟齬がうまれたり、誤解が生じたりすることがあります。しかし、プロトタイプで見える化することで多くの人から合意を得られるような形にすることが可能です。

プロトタイプを実際に作ると、アイデアの時点ではわからなかった課題が出てきて議論へ発展するケースも考えられます。また、「ここはこうしたほうがよいのでは?」と新しいアイデアが生まれることもあるでしょう。

これまでのプロセスで条件を絞ったうえで改良を重ねられるため、スピーディーに解決策の改善が可能です。

プロトタイプはプロダクトや課題にもよりますが、以下のような方法で作成します。

ストーリーボード

ユーザーがどのようにプロダクトを使うのか、イラストを用いて検証します。かんたんにいえばプロダクトを使うユーザーのストーリーの絵コンテです。利用するシーンがイメージしやすくなるため、ユーザーの行動や心理にも共感しやすくなります。

ペーパープロトタイプ

文字どおり紙に描いてシミュレーションする方法です。紙とペンがあればすぐにアイデアを具体化できます。ツールなどの使い方がわからなくても、アイデアの共有がしやすいことがメリットです。

モックアップ

プロトタイピングツールを使用してより実践的なプロトタイプを作成します。多く用いられるのはFigmaやAdobe XDです。共有や改良もしやすいメリットがありますが、作成まで時間がかかります。

プロトタイプの作成方法は、以下の記事でもくわしく解説しています。チーム内のディスカッションの活性化につなげてみてください。

関連記事:Webデザインのプロトタイプとは?作成方法やおすすめツールを紹介

プロセス5. テスト

作成したプロトタイプが問題の解決につながっているのか、テストを実施してユーザーに評価してもらいます。テストでユーザーに実際に使ってもらうことで、より共感を深めることが可能です。使用するユーザーを観察しながら「なぜそういう行動をとったのか」と考えます。

テストでは「このアイデアなら解決する」と確信をもって作成したプロトタイプでも、実際に使ってみたら着眼点がずれている可能性もあります。テスト中の観察やフィードバックをもとに、より良いプロダクトに向けた改善のサイクルをまわしていくことが大切です。

デザイン思考のほかのプロセス

デザイン思考はマインドセットを重視していることもあり、さまざまなフレームワークやアプローチが提唱されています。今回は以下の3つのプロセスについて解説します。

  • IDEO(アイディオ)
  • イリノイ工科大学
  • ダブルダイヤモンド

IDEO(アイデオ)のプロセス

アメリカのカルフォルニア州にあるコンサルティング会社『IDEO(アイディオ)』が提唱するプロセスは以下のとおりです。

1. 有用性(Desirability)

「このプロダクトは誰に必要とされているのか」「ほかに良いアイデアはないのか」など、人を中心にニーズや需要を深堀りして問題を抽出します。

2. 持続可能性(Viability)

プロダクトが問題なく展開できるうえに、継続的に価値を提供できる技術があるか検証を行います。

3. 実現可能性(Feasibility)

アイデアを市場へ出してもよいか、リソースを確認します。出したアイデアを収束させていきます。

これら3つのプロセスの順番は決まっておらず、どこから始めても大丈夫です。

イリノイ工科大学のプロセス

アメリカのイリノイ工科大学内にあるデザインスクールInstitute of Design(ID)では「101デザインメソッド」で以下のデザイン・イノベーション7つのプロセスを提唱しています。

  1. 目的を見出す
  2. コンテクストを知る
  3. 人々を知る
  4. インサイトをまとめる
  5. コンセプトを探求する
  6. 解決策を練る
  7. プロダクトを実現する

代表的なデザイン思考のプロセスと異なるのは「目的を見出す」という点です。「調査」「分析」「統合」「実現」のカテゴリに分かれていますが、どこからスタートしても問題はありません。

ダブルダイヤモンドのプロセス

「ダブルダイヤモンド」は2003年にイギリスのDesign Council(デザイン・カウンシル)によって開発されたフレームワークです。「発想的思考」と「収束的思考」を表す2つのダイヤモンド(ひし形)で構成されていて、以下のように4段階に分かれています。各段階を飛び越えて使うことも可能です。

  1.  Discover|探索・発見
  2. Define|確定・定義
  3. Develop|開発・展開
  4. Deliver|提供

言葉は異なるものの「d.school」のデザイン思考のプロセスと大きな違いはありません。「ダブルダイヤモンド」はサービスデザインのプロセスを具体化できるフレームワークとして、プロダクトの改善に役立てられています。

ダブルダイヤモンドでも提唱されている「人間中心設計」については、下記の記事でもくわしく解説されています。

関連記事:人間中心設計とは?具体的な設計方法と事例を解説

デザイン思考ではマインドセットが大切

デザイン思考を導入すれば、ビジネスにイノベーションを実現できるのではないかと、大きな成果を期待してしまう人もいるでしょう。

しかし、デザイン思考はプロセスを経て成果を得るのではなく、マインドセット(思考法)が重視されています。目に見えるような成果をすぐに得られないことを、理解したうえで取り組むことが大切です。

失敗してもすぐに立ち戻り、何度もくり返すことでデザイン思考のマインドセットが身についてきます。

デザイン思考力を鍛える方法

デザイン思考のプロセスについて理解したものの、どのように現場に取り入れたらいいのか具体的な導入方法に悩む企業は少なくありません。デザイン思考を学ぶ機会の創出に役立つ方法をご紹介します。

従業員でデザイン思考テストを受検する

『デザイン思考テスト』はイノベーションテックカンパニーのVISITS Technologies株式会社が開発したテストです。日米特許技術により客観的に創造力などを測定します。テストは「創造セッション」と「評価セッション」の2つのフェーズがあり、それぞれ以下のような特徴があります。

創造セッション

「誰が」「どこで」「どんなとき」とシチュエーションを選択して、そのニーズを考えます。

評価セッション

他の受検者が「創造セッション」で出したアイデアを制限時間内でくり返し評価します。

『デザイン思考テスト』は明確な答えはなく、受検者が互いに評価をします。取得したスコアは創造力の高さを表しているため、成長を実感しやすいのもポイントです。

2023年6月時点の導入企業数は300社以上、受検者数は30万人以上と年々増加しています。

テストはオンライン形式で受検料は4,950円(税込)です。従業員全体で実施したい場合、企業向けの団体テストを選択できます。従業員の創造力の養成に役立ててみてはいかがでしょうか。

公式サイト:デザイン思考テスト

日常生活にデザイン思考を取り入れてみる

デザイン思考力を鍛えるには、くり返し実践して思考のプロセスに慣れることがポイントです。デザイン思考力のトレーニングは日常生活でも取り入れることできます。たとえば以下のようなシチュエーションをふまえて、デザイン思考のプロセスに取り組んでみましょう。

課題

部署で開催するランチ会に集まる人が少ない。どうすれば集まるのか

共感

部署メンバーに話を聞いて現状を把握する。

問題定義

ランチ会に集まらない理由は「時間の調整がむずかしい」「食べたいものが決まっている」とあった。

アイデア

ランチ会開催前に事前アンケートを実施して希望日や食べたいものを聞くことが有効だろうとなった。

プロトタイプ&テスト

実際にアンケートをとり、参加申請が多い日にランチ会を開催。食べたいものは中華が圧倒的に多かった。

ふだんはあまり気にもとめないシチュエーションを意識してみつめることで、意外な課題を見つけることが可能です。

デザイン思考を導入した企業の事例を参考にする

デザイン思考を実践する前に、他社の事例を知ることは大切です。しかし、システムの導入などとは異なり、導入すれば同じように成果が得られるわけではありません。

たとえば、「ユーザーを対象にSNSでアンケートを取った」と書かれた内容を鵜呑みにして、そのまま真似るのはよくありません。SNSで十分な調査結果を得るには、フォロワー数をはじめ、ふだんから発信をしているなど万全な運用体制があるからできることです。そもそもSNSのフォロワー数が少ない場合、同じようにアンケートを取っても活用できるほどの結果は得られないでしょう。

企業の導入事例を見るときは「なぜSNSを使ったんだろう」と行動の理由を分析することが大切です。「なぜ」と考えたときに「フォロワー数が多い」「ふだんから発信をしている」といった理由が見えてきたら「まずはSNSの運用体制を整えよう」と現状の改善点の発見につながります。

下記の記事では、デザイン思考をビジネスで活用した事例を紹介しています。自社の現状と照らし合わせながら、導入方法や成果をチェックしてみてください。

関連記事:デザイン思考をビジネスで活用した事例8選|必要性や導入方法も解説

UI/UXデザイナーをお探しならクロスデザイナーにおまかせください

デザイン思考のプロセスは、事業展開やプロダクト開発をするうえで活用されている思考法です。企業の経済的な成長には不可欠なものとして、国も導入を推進しています。

しかし、デザイン思考のプロセスに必要な創造力はかんたんに身につけることはできません。そこでデザイン思考と同じようにユーザーを起点とするUI/UXデザイナーが注目を浴びています。社内育成が難しい職種のため、外部人材に頼ろうと考えている企業もいるのではないでしょうか。

もしUI/UXデザイナーをお探しなら、クロスデザイナーにおまかせください。

クロスデザイナーはフリーランスデザイナーに特化したエージェントサービスです。『Workship』に登録する約7,000人以上のフリーランスより、要望にあわせたUI/UXデザイナーを提案いたします。

業務委託契約はもちろん、正社員転換のサポートも行っています。気になる方は下記よりサービス資料を無料でダウンロードいただけます。どうぞ貴社のデザイナー人材のお悩みにお役立てください。


クロスデザイナー|法人・クライアント向けサービス資料|フリーランスデザイナー・業務委託採用|クロスデザイナー

xdesigner.jp

og_img


デザイナー採用で直面する課題から採用活動での注意点、具体的な採用手法までをご紹介します。
日本最大級のフリーランスデザイナー専門エージェントサービス「クロスデザイナー」
UI/UXデザイン、アプリデザイン、グラフィックデザイン、そしてアートディレクションなど、多様化するデザイナー職。 7,000人以上ものフリーランスデザイナーが登録するクロスデザイナーなら、ヒアリングさせていただいた最短即日中に複数名の即戦力デザイナーをご提案。さらに条件が合えば最短3日でアサイン可能です。 さらに、採用コンサルタントがお客様の案件内容をヒアリングの上、稼働日数やスキル条件など、求められる採用要件をアドバイスさせていただくため、採用のミスマッチを最小限に抑えます。 事業成長を加速させるデザインを実現いたします。
サービス資料でわかること
  • クロスデザイナーの特徴
  • クロスデザイナーに登録しているデザイナー参考例
  • 各サービスプラン概要
  • 支援実績・お客様の声
吉永 ゆくら
記事を書いた人
吉永 ゆくら

デザイン系の専門学校でグラフィックデザインを学ぶ。デザイン事務所に就職後、縫製業と企業の専属ライターを経てフリーランスに。デザイン・縫製・Webとものづくりの楽しさとやりがいを仕事を通して感じています。現在はオウンドメディアのコンテンツ制作を中心に活動中。