
アートディレクターとデザイナーの違いは、実際に手を動かしてデザイン制作をするかどうかにあります。
アートディレクターは、デザインを完成させるまでの総監督としてクライアントとやり取りをしたり、デザイナーに指示を出したりするのが仕事です。
この2つの職種の違いを理解しておかなければ、採用ミスマッチにつながる可能性もあるため注意が必要です。
この記事では、アートディレクターとデザイナーの違いについて解説します。また、必要なスキルや資格、年収についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
アートディレクターとは?デザイナーとの違いを解説
アートディレクターとデザイナーの役割は以下のとおりです。
- デザイナー:アートディレクターが示した方向性に沿って実際にデザインを制作する職種
- アートディレクター:ビジュアルデザインの方向性を定めてプロジェクトを進める責任者
それぞれの違いについて解説します。
違い1. 肩書き
- デザイナー:媒体で異なる
- アートディレクター:媒体が変わっても呼称は変わらない
デザイナーはグラフィックデザイナーやWebデザイナーなど、制作する媒体によって呼び方が異なります。
たとえば、グラフィックデザイナーでも広告媒体を扱うデザイナーは「広告デザイナー」ですし、書籍の表紙をデザインするのは「ブックデザイナー」と扱う媒体によって変わります。WebデザイナーもUI/UXデザイナーやゲームデザイナー、3Dデザイナーなど担当する媒体で呼び方は違います。
デザイン制作においてディレクションをおこなうアートディレクターは、デザイン制作における品質管理が仕事のため、媒体や業界が違っても肩書きが変わることはほとんどありません。
違い2. 経験
- デザイナー:デザインの制作経験
- アートディレクター:デザイン制作とディレクション経験
デザイナーはデザインの制作経験があれば、実務経験がなくても名乗ることが可能です。自主制作でも制作経験としてカウントできるため、実務経験者が欲しいときはきちんと募集要項に「実務経験〇年以上」と書いておくことが大切です。
アートディレクターはデザインを評価するためのスキルや知識が必要です。実務経験がなければ、アートディレクターとしてのスキルは得にくいと言えます。扱ってきた媒体でも差があるため、アートディレクターの募集にきた応募者は、まずどの媒体でデザイナーとしての経験があるのかを確認しましょう。
違い3. 視点
- デザイナー:デザインを完成させる
- アートディレクター:高品質なデザインを期間内に仕上げる
デザイナーは定められた納期までに指示されたデザインを仕上げます。アートディレクターからの指示を守りつつ、制作をすすめます。
対して、アートディレクターは「クライアントの要望に沿って進めているか」「方向性に誤りはないか」「期日までに間に合うか」などデザインの品質やスケジュールをチェックしています。クリエイターとしてビジネスの課題を解決するために制作を管理しながら進めていくわけです。
デザイナーでも依頼の意図をしっかりと踏まえて、納期を意識したうえで制作を進められる人なら、アートディレクターとして採用してもよいでしょう。
デザイナーの種類と仕事内容
デザイナーといっても働く業界によって呼び方が少し異なります。携わる業界によって専門性が変わるため、呼び方でどの業界に関する知識を持っているのかを把握することが可能です。
グラフィックデザイナー
ポスターやカタログなど紙媒体を中心とした平面デザインを手がけます。広告や出版物のデザインを扱うことが多く、アートディレクターへステップアップする人も多い職種です。
ファッションデザイナー
洋服のデザインを制作します。活躍する現場によって「コレクションデザイナー」「アパレルデザイナー」「衣装デザイナー」など肩書きが異なります。
インテリアデザイナー
インテリアデザイナーは、住宅やオフィスなど室内装飾のデザインをします。色や人間工学、心理学、建築学、美術など幅広い分野に関する知識が必要とされる仕事です。一人前になるための下積み期間は約10年とも言われます。
ブックデザイナー
ブックデザイナーは雑誌や書籍などの表紙をデザインします。本の内容をもとにビジュアルを作るため、創造力なども求められる仕事です。表紙だけではなく、目次や本全体のデザインを担当することもあります。
Webデザイナー
Webデザイナーは、Webサイトの企画やデザイン制作します。クライアントの要望とデータなどをもとに企画を立てて制作します。実績があればフリーランスとして活動する人も多くいる職種です。
CGデザイナー
CGデザイナーとは、コンピューターグラフィックで2Dや3Dデザインを制作するデザイナーです。オリジナル作品で活躍する人もいれば、クライアントの要望に沿ったイラストを描く人もいます。フリーランスとして活躍する人が多い職種です。
関連記事:3Dデザイナーとは?仕事内容やスキル、需要の変化について解説
アートディレクターの仕事内容と役割5つ
アートディレクターの仕事内容をかんたんにいえば、デザインプロジェクトの指揮官です。クライアントが要望しているデザインを納期までに仕上げられるように、進めていきます。具体的にどのような仕事になるのかかんたんに解説します。
1. ヒアリング
まずはクライアントの要望を聞いて、デザインを制作するまでの計画を立てていきます。要望に沿ったデザインを完成させるため、以下の内容を確認します。
- 達成したい目的
- 現状の課題
- プロダクト
- ターゲット
- 企業の強み
- 与えたいイメージ
- 予算
- 媒体
- 納期
言葉だけで決めると認識に齟齬が生まれる可能性もあるため、具体的なデザイン例を出して、完成のイメージをすり合わせます。
2. コンセプト設計
ヒアリングの内容をもとに、デザイン制作のコンセプトを設計します。たとえばプロダクトが伝統的な工芸品など職人の手仕事によって生まれたものなら「職人の手や真剣な表情」や「工芸品の細部の美しさ」をアピールできるデザインが望ましいでしょう。ヒアリング内容をもとにデザインのコンセプトを決めていきます。
どう表現するかを決めたら、ラフ案を作成して完成形のイメージをすりあわせます。目的を達成するために、さまざまなアイデアを出してデザインの方向性を決定します。
3. スタッフのアサイン
つぎは実際にデザインを制作するデザイナーを集めます。制作するデザイナーのスキルがクオリティに影響を及ぼすため、スキルやタッチを確認しましょう。
Webサイト制作の場合、Webデザイナーだけではなく、コーダーやライターなど複数の人材が関わってきます。コーディングまで担当できるWebデザイナーなら、コーダーは不要です。アートディレクターは、スタッフのスキルを正しく理解したり、デザイン制作期間中に方向性がズレないように定期的に確認したりという仕事も行います。
4. クオリティチェック
デザインが完成したら、クライアントが要望したとおりのデザインに仕上がっているのか、品質を確認します。プロジェクトが複数あると、それぞれの品質を管理するのはたいへんです。デザイナーとして多くの経験を積んできたアートディレクターだからこそ、適切に評価できます。品質に問題がなければ、そのままクライアントへ納品します。
5. プレゼンテーション
最終的な方向性を確認するためのプレゼンテーションを実施します。方向性に誤りがなくても、完成したデザインから受ける印象などは個人差があるため、クライアントも参加するプレゼンテーションでは、さまざまな意見が出てくることもあります。指摘された箇所はデザイナーと共有して、修正をして再度提出します。
デザイナーでもフリーランスや小規模事業所、広告代理店など働く環境によってはアートディレクターと同じような仕事をすることもあります。

アートディレクターに必要なスキルや資格5選
アートディレクターはプロジェクトを成功まで導く責任がある。そのために必要な5つのスキルについて解説します。
1. スケジュール管理能力
アートディレクターは自分だけではなく、制作チーム全体のスケジュールを把握しなければなりません。スケジュールの遅れは納期にも大きく影響します。大きなプロジェクトとなると、のちの工程にも大きく影響を及ぼすため必須スキルともいえます。
採用面接では、これまでの経験で日程調整や進捗報告などがきちんとできる人かを見極めることが大切です。デザイナーでも進捗管理がしっかりしていれば、アートディレクターとして活躍が期待できます。
2. ビジュアルデザインに関するスキル
アートディレクターはデザインのクオリティチェックを担当するため、表現方法やデザインのトレンドなどビジュアルデザインに関するスキルや知識がなければ務まりません。技術はポートフォリオを見て判断できます。トレンドについては面接時に質問してみるとよいでしょう。
関連記事:ポートフォリオの採用基準とは?効率的に採用するための6つの評価ポイント
3. デザインツールを扱うスキル
デザインを制作するソフトにはさまざまな種類があります。デザイナー経験のあるアートディレクターは、ツールやソフトウェアに関する知識を備えているため、目的にあわせで選定することが可能です。ツールを扱えるスキルを証明するものとして、以下のような資格があります。
- アドビ認定プロフェッショナル
- CGクリエイター検定
- Webクリエイター能力認定試験
4. コミュニケーションスキル
アートディレクターはクライアントとのやり取りだけではなく、制作するデザイナーやイラストレーターへの指導など人と関わることが多い職種のため、コミュニケーションスキルは大切です。
打ち解けやすいという印象も大切ですが、相手が何を伝えたいのか、意図を把握できる傾聴力や、ロジカルに説明する説明力、わかりやすく伝える文章力といったスキルを指しています。
5. マネジメントスキル
アートディレクターはディレクションがおもな仕事ですが、デザイン制作プロジェクトの進行において、マネジメントスキルも必要です。日々、デザイナーの業務を監督しつつ、戦略的に進めることができます。
アートディレクターとデザイナーの平均年収
アートディレクターと広告デザイナーの平均年収は以下の通りです。
職種 | 平均年収 | 平均月収 |
アートディレクター | 579.8万円 | 26万円 |
広告デザイナー | 480.6万円 | 25.4万円 |
参照:厚生労働省『jobtag』
アートディレクターはプロジェクトの責任者ということもあり、デザイナーより約100万円近く年収が高い傾向にあることがわかります。ただし、デザイナーは同じ職種でも、経験年数や勤務先で年収相場や作業範囲が変わります。
デザイナーとして3~5年ほど経験したら、アートディレクターとなっている人も少なくありません。とくに資格が必要ではないため、スキル重視で採用を決めるとよいでしょう。
募集するときは、優れた人材を獲得するためにも、平均年収を下回らないように設定することが大切です。
関連記事:デザイナーの採用コストはどのくらい?費用を削減する方法も解説!
アートディレクターに向いている人の特徴
アートディレクターを募集してもなかなか応募がないなら、デザイナーをアートディレクターとして採用してみましょう。十分なスキルと経験があっても、ディレクション業務は向き不向きがあります。ここでは、アートディレクター向きのデザイナーとはどんな人なのか解説します。
自走力・課題解決力がある人
アートディレクターはトラブルが起きたときに、柔軟に立ち回り、指示ができなければなりません。デザイナーは基本的に指示に従うだけですが、トラブルの原因などをくみ取り、自ら動ける人ならアートディレクターの素質があります。
面接でトラブルを乗り越えた経験があるか、などの質問をすることもおすすめです。トラブルにどう関わり、どのように解決したのかを聞くことで自走力・課題解決力があるかを判断できます。
マーケティング視点がある人
ビジネス視点やマーケティングの視点があるデザイナーは、アートディレクターとしても活躍できます。デザイナーはビジュアルのクオリティを意識すればよいですが、マーケティング視点をもつデザイナーは「売上」や「認知」といった達成したい目的を意識したデザインが可能です。
ポートフォリオで制作した背景、デザインの意図を確認することでマーケティング視点の有無を確認できます。
チームで仕事をするのが得意な人
コミュニケーション力があり、チームを率いた経験がある人はアートディレクターに向いています。周囲の状況を確認しつつ、士気を落とさないように率いることができる人は、アートディレクターとしての採用を検討することがおすすめです。
アートディレクター兼デザイナー(AD)もいる
デザイナーとして実際にデザインを制作しつつ、ディレクション業務も担う「アートディレクター兼デザイナー(AD)」もいます。どちらの実務経験を積んだうえで独立している人も少なくありません。
実は、アートディレクターとデザイナーの就業形態は、フリーランス・個人事業主がもっとも多いことをご存じでしょうか。求人への応募がこない理由はさまざまありますが、デザイナーは数年間働いた後に独立する人も多いため、社員の募集をかけても理想の人材から応募が集まりにくいと言えます。
また、デザイナーはスキルレベルを判断しづらいため、選考に悩む担当者も少なくありません。フリーランスなら、自分の営業活動のためにポートフォリオを作成しています。作品のタッチや制作ソフト、意図などを確認して、求めるスキルを備えているかを確認してください。
下記の資料では、採用活動で必要となるペルソナの作成方法について、すぐに使えるフォーマット付きで解説しています。無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

アートディレクター採用で押さえるべきポイント
次に、アートディレクター採用で押さえるべきポイントを解説します。
採用時の評価基準と選考プロセス
アートディレクター採用では、評価基準の明確化と体系的な選考プロセスが重要です。具体的には、デザイン力やマネジメント経験、コミュニケーション力、主体性、企業文化との適合度など多角的な観点で評価します。
書類選考では実績と専門性、一次・二次面接では現場責任者や経営層が役割ごとに評価項目を分担し、採用基準が主観的にならないよう徹底しながら進めます。入社後のミスマッチ予防にもつながるため、要件や評価項目は関係者で事前にしっかりと共有しましょう。
ポートフォリオと過去実績の見方
ポートフォリオはアートディレクター候補の強みや経験を判断する最重要資料です。掲載作品のクオリティや完成度、UI/UXへの配慮、チームでの役割や意思決定の具体例まで確認しましょう。
単なる成果ではなく、課題発見から問題解決までのプロセスや、コミュニケーション力・マネジメントスキルも重視することがポイントです。自社プロジェクトに活かせる視点があるか、自社の課題解決力を感じるかもあわせて評価しましょう。
面接で見極めるための質問例
面接では“どのようにチームをまとめてきたか”“難題に直面した際の解決プロセス”“クライアントや関係部門とどう調整したか”など、実践的な質問が効果的です。
また「ポートフォリオの中で最も苦労したプロジェクトと乗り越えた方法」「自分が担当した中で、後輩育成やチーム成長に貢献したエピソード」「最新トレンドや自己研鑽のために取り組んでいること」なども有効です。
総合的なリーダーシップや現場調整力を見極めるために、具体的なエピソードベースで深掘りしましょう。
以下の資料では、日本で主流とされてきた「メンバーシップ型」と比較したジョブ型の説明に加え、実際に導入すべきかの判断ポイントも含めて解説しています。無料でダウンロードできますので、ぜひ参考にしてください。

フリーランスのアートディレクターへ業務委託するメリットとコツ
以下では、フリーランスのアートディレクターに業務委託するメリットとコツを解説します。
外部委託のメリット|コストとリスクを分散できる
フリーランスのアートディレクターに業務委託することで、正社員採用にかかる固定費や人材育成のコストを抑えつつ、即戦力でプロフェッショナルな人材を柔軟に確保できます。
プロジェクト単位や期間限定で契約できるため、必要なときに必要な分だけリソースを調達でき、余剰人員や無駄なコストの発生を防ぎやすいです。
また、複数案件や外部委託先をバランス良く活用することで、特定人材への依存リスクや納期遅延といった事業リスクも分散できるメリットがあります。
コミュニケーションや進行管理のコツ
フリーランスとの業務委託では、直接的かつ迅速なコミュニケーションが可能な点が大きな強みです。
密な進捗確認や定期的なフィードバックの場を設けることで、要望のズレや認識違いを未然に防ぎやすくなります。また、オンラインミーティングやチャットツールを活用し、資料や指示は文章とビジュアルでセットにして伝えると効果的です。
納品や修正のスケジュールを明確に共有し、途中段階での“見せ球”による品質チェックも欠かせません。
成功事例から学ぶ最適な依頼方法
実績豊富なフリーランスアートディレクターへの依頼では、プロジェクトの目的や期待成果、スケジュール、業務範囲を最初に詳細まで共有し、目標と役割を明確にすることが成功のポイントです。
実際に、要件定義を丁寧に詰めたことで、短期間でクオリティの高い成果物が納品された事例もあります。
また、複数のフリーランスと比較・検討し、ポートフォリオの内容や過去の対応履歴を重視して選定することで、リスクを事前に回避できます。
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アートディレクターをお探しならクロスデザイナーにご依頼ください
デザイナーのなりやすさに比べ、アートディレクターはデザイナー経験が必要です。それぞれスキルが重視される仕事のため、採用するときは経験だけではなく、ポートフォリオもしっかりとチェックすることが大切です。
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