
多種多様な働き方が認められるようになった今、「業務委託」という働き方が注目を浴びています。自社では負いきれない業務や専門的な仕事を案件ごとに任せたいと考えている企業の担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、業務委託とは何か、派遣との違いに加え、企業と人材の双方の視点からのメリット・デメリット、契約の流れや企業側から見た注意点などを解説します。業務委託を活用する前に、チェックすべきポイントの把握に役立ててください。
業務委託とは
業務委託とは、企業が自社の業務を他社の企業や個人など、外部の人に依頼しておこなう業務形態のことです。
業務委託では成果物や業務に対して報酬が発生します。企業と雇用契約を結んでいる会社員やアルバイトとは違い、業務委託では「企業=雇用主」という形ではなく、対等な関係としてやり取りをおこないます。
需要が増えている背景として、個人事業主やフリーランスの働き方をする人が増えたことや、企業が得たい成果物に対して実行するリソースやスキルが内部に不足していることが挙げられます。
業務委託はスポットで依頼できる点を活かし、さまざまな専門的な業務において業務委託を活用する場面は増えています。
業務委託の2つの種類
業務委託契約という言葉は正式名称ではなく、「請負契約」と「委任/準委任契約」に法律上では分けられます。「請負契約」と「準委任契約」の大きな違いは、業務の目的です。
請負契約型
請負契約は、成果物の完成で報酬が発生する契約形態です。請負契約は、どのように業務を進めたか、何時間作業したかなどのプロセスは一切問いません。「完成責任」があり、発注者側が依頼したものが完成して納品されることが目的です。発注者は受注者の仕事が完成してから報酬を支払います(民法第633条、後払いの原則)
期日までに上がらない、もしくは依頼水準に満たなかった場合は、発注者側は業務上の不利益を被ったとして、契約を解除することができます。契約解除となった場合、発注者は受注者から請求されても報酬を支払う義務はありません。
また、納品したものに不備・不具合があった場合、受注者側に修正の義務が生じます。(契約不適合責任)
委任契約型(準委任契約)
準委任契約は、契約期間中、契約内容通りに業務を遂行することが報酬発生の条件です。請負契約と違い、成果物の完成責任を負うことはありません。契約期間中、契約内容通りに業務を遂行することが報酬発生の条件になります。
成果物の質などは問われず、業務を対象としています。発注者はいつでも契約の解除が可能です(民法第651条1項)。
対象となる業務内容が法律行為に該当する場合、委任契約になります。「準委任契約」は法律以外のあらゆるものが対象となります。
業務委託と派遣契約の3つの相違点
ここでは業務委託と派遣契約の違いについて説明します。
契約
業務委託は発注側である会社と直接「業務委託契約」を結びます。一方で派遣社員は派遣会社と「雇用契約」を結びます。派遣社員は実際に働く企業(派遣されている企業)との直接の雇用契約はありませんが、派遣社員への業務の指示は派遣先の企業がおこないます。
報酬
業務委託では、発注先の会社から成果物や業務の遂行に対して「報酬」を受け取ります。派遣社員は、派遣会社から「給与収入」を受け取り、報酬の形態は時給制が一般的です。また、派遣社員は仕事の成果物や結果に対して責任はありません。対価である給与を支払うことで、労働力が提供されます。
社会保険
業務委託では、発注者側の会社と受託者は雇用契約ではないため社会保険に加入することはできません。派遣社員は派遣会社と雇用契約にあるため、社会保険や雇用保険も派遣会社が責任を負います。
【企業側】業務委託を活用する4つのメリット
企業側から見たメリットを解説します。
- 専門性の高い業務をすぐに任せられる
- 人材育成のコストを抑えられる
- 社内人材を基幹業務に充てられる
- プロジェクトに柔軟に対応できる
1. 専門性の高い業務をすぐに任せられる
業務委託で活躍する人は企業に属さずとも案件が受注できるような専門性の高いスキルを持った人が多くいます。採用や派遣よりも、より専門性の高いスキルを持った人と出会える可能性は高くなり、プロジェクトで専門性の高い業務があった場合にすぐに任せられます。
2. 人材育成のコストを抑えられる
業務委託を利用すれば、必要なスキルを持った人に委託できるため、自社での人材育成のコストを抑えることができます。
仮に社員で採用しようと思えば、専門スキルを持った優秀な人であればあるほど、企業として支払う給与は高くなるでしょう。また、優秀な人は中途採用市場に出てくることも少なく、採用コストも上がります。
業務委託を利用することで、採用といった手間のかかるプロセスやコストをすべてカットでき、必要なときに専門性の高いスキルを活かすことができます。また、人材教育のコストや離職リスクも抑えられることは、経営上大きなメリットと言えます。
3. 社内人材を基幹業務に充てられる
業務委託を利用すれば、これまでその業務に時間をかけていた社内人材をコア業務に集中させることができます。業務委託は自社で業務の管理をする必要もないため、人材を余分に割く必要もありません。必要な分だけを業務委託することで、業務の効率化にもつながります。
4. プロジェクトに柔軟に対応できる
業務委託は必要な時期だけに依頼することができます。急ぎのプロジェクトが発生した際も専門的なスキルを持った人に必要部分のみを任せられるため、プロジェクトに柔軟に対応することができます。また、常時雇用よりも経費を抑えることもできます。
【企業側】業務委託を活用する4つのデメリット
反対に業務委託するデメリットもあります。次の4つを理解したうえで、業務委託するべきかどうかを検討しましょう。
- 専門性が高いとコストは割高になることもある
- 業務の管理が困難であり、仕事の質が下がることもある
- 社内に知見やノウハウが蓄積されにくい
- 情報漏洩のリスクがある
1. 専門性が高いとコストは割高になることもある
業務委託の報酬は、スキルや専門性が高いほど割高な傾向にあります。社内で不足しているリソースなら必要業務としてやむを得ない反面、委託内容によっては、報酬が自社の採用・教育コストよりも高くなるおそれもあります。
ただし、委託範囲や業務内容を精査し、任せる範囲を限定することでコストを抑えることもできます。
2. 業務の管理が困難であり、仕事の質が下がることもある
業務委託では、発注者は受注者に直接の指示を下すことができません。そのため、業務の管理や成果物の質に問題が生じるおそれがあります。仕事の質は会社の評価にも関わるため、任せる範囲は慎重に精査しましょう。
質を落とさないためにも、契約時に業務の進め方や連絡方法などをしっかりすり合わせをしてルールを決めることがおすすめです。また、業務委託前に、面談を行ったり、ポートフォリオを確認するなどしてミスマッチを防ぐのも重要です。
3. 社内に知見やノウハウが蓄積されにくい
業務委託の大きなメリットは、社内では専門性が高くて困難な業務を、高いクオリティで完成させられることにあります。しかし業務委託に頼りすぎると、社内に知見やノウハウが蓄積されず、優秀な人材が育ちにくくなるおそれがあります。すでにその業務に対するノウハウがあれば別ですが、知見やノウハウを蓄積させたい場合は、定期的にミーティングを開催して、情報の共有を図りましょう。
4. 情報漏洩のリスクがある
業務委託では社内の情報を外部に共有する必要があるため、常に情報漏洩のリスクが伴います。最悪の場合、情報流出に伴う賠償責任などが生じるだけでなく、自社の業界での評判が落ちることも否めません。
情報漏洩の対策方法として、委託前にNDA(秘密保持契約)を締結しましょう。NDAを結んでおけば、何が秘密情報に値するか明確に定義することができます。万が一情報漏洩があった際も責任の所在を明らかにすることが可能であり、有効な対策となりえます。
【労働者側】業務委託として働く3つのメリット
ここからは、労働者側が業務委託を受ける場合のメリットについて解説していきます。
- 働く時間や場所を自分で決められる
- 自分の強みを活かした業務が選べる
- 能力次第で収入を大きく伸ばせる
1. 働く時間や場所を自分で決められる
業務委託は働く時間や場所を自分で決めることができます。企業と雇用契約を結んでいるわけではないため、勤務時間や場所を縛られることはありません。業務委託は成果物に対する契約になるため、成果物が企業の納得するものであれば過程は問われないからです。平日昼間は役所や病院に行くこともできるため、自分のライフスタイルに合わせて自由に仕事のスケジュールを調整できます。
2. 自分の強みを活かした業務が選べる
案件を自由に選ぶことができる業務委託では、今まで磨いてきた自分のスキルを発揮することができます。正社員であれば、人事異動によって自分に不向きな業務にあたる可能性もありますが、業務委託では自分の強みを活かした業務が選べます。得意分野に絞って案件を選ぶことで、社会的な評価を高めることもできます。
ただし、選り好みしすぎると、案件の幅も狭まります。また、実績の少ない最初のうちは思うように選べない可能性もあります。
3. 能力次第で収入を大きく伸ばせる
業務委託の報酬は、時給換算ではなく、成果物に対して支払われます。案件の難易度や成果物の内容によって報酬は変わるため、能力次第では収入を大きく伸ばせます。仕事を多数していく中で社会的に評価されていけば、オファーが増えていく期待もできるでしょう。スキルや能力を磨いていくことで、高収入も可能となります。
【労働者側】業務委託をとして働く5つのデメリット
当然デメリットも存在します。メリットだけに目を向けるのではなく、デメリットにも目を向けて、業務委託として働く際の参考にしましょう。
- 収入が不安定
- 労働基準法が適用されない
- 社会保険や雇用保険、厚生年金に加入できない
- 税金関係の手続きを自分でする必要がある
- 仕事探しや契約書の確認、交渉などの仕事以外の業務が発生する
1. 収入が不安定
駆け出しの頃は信用も実績もないため、思うように案件を確保できないおそれもあります。また、案件は自分で探して取得していかないといけないため、会社員のように安定した収入が得られない可能性もあります。ある程度の実績を積んでいけば、同じ企業から安定して案件が来ることもありますが、収入が多い月もあれば少ない月もあることを忘れないようにしましょう。
2. 労働基準法が適用されない
業務委託は企業と雇用契約にないため、労働基準法が適用されません。契約は成果物に対して行われるため、働き方は自由というメリットがある一方、契約次第で割に合わず、最低賃金を下回ることもありえます。
このような事態を防ぐためにも、見積書を作成したり、無理のないスケジューリングをしたりしなければなりません。仕事だけでなく、休みの日や体調も含めてすべて自分でコントロールすることが重要です。
3. 社会保険や雇用保険、厚生年金に加入できない
業務委託は、企業との雇用関係を結んでいないため、社会保険や雇用保険、厚生年金に加入できません。そのため、病気や怪我などで経済的に困窮するおそれもあります。体調をしっかり管理して仕事に取り掛からなくてはいけません。
このようなリスクを抑えるためにも、民間保険に加入することを視野に入れましょう。また、個人事業主として国民年金のみに加入できます。自分で保険を手配して万が一に備えましょう。
4. 税金関係の手続きを自分でする必要がある
会社員の場合は、社会保険などもすべて企業が手続きをしてくれます。しかし、業務委託の場合は確定申告や住民税の支払いの処理などすべて自分でしなければなりません。
慣れないうちは負担のかかる業務となるため、自分で何をしなければならないのか、事前にしっかり把握してく必要があります。
5. 仕事探しや契約書の確認、交渉などの仕事以外の業務が発生する
会社員のように会社から仕事を渡されることはないため、自分で仕事を探さないといけません。また、委託先の企業との打ち合わせや見積書の作成、契約書の確認といった仕事以外の業務も発生します。特に駆け出しの頃は、信用も実績もないため、スムーズに仕事が見つかる可能性は低いと言えます。仕事探しの方法もちゃんと調べておきましょう。
業務委託契約の6ステップ
業務委託する際は、支払い条件や期日、秘密保持などの項目を事前にクリアすることが重要です。認識にズレがあると、企業側は「期待していた成果物を得られない」、労働者側は「納品したにもかかわらず報酬が支払われない」といったトラブルにつながるおそれもあります。
このようなトラブルを防止するためにも、業務委託契約を結びましょう。一般的な流れは次の通りです。
- 契約内容のすり合わせ
- 契約書の作成
- 契約書の締結
- 業務の実施
- 業務完了確認
- 報酬支払い手続き
1. 契約内容のすり合わせ
発注者である企業は、業務委託する内容を提案書や募集要項にまとめます。受注者はこの提案書や募集要項を元に見積書を作成し、双方合意の上で内容をすり合わせていきます。
2. 契約書の作成
提案書と見積書が合意に至ったら、正式な契約書を作成します。契約書には法的な規定や責任範囲だけでなく、業務の範囲や支払い条件、期日、秘密保持や知的財産権、損賠賠償などの項目を明記します。
3. 契約書の締結
契約書の内容に合意すれば、契約書の締結になります。契約締結後は、法的な拘束力が発生するため、契約の遵守が求められます。
4. 業務の実施
契約の締結後、業務を開始します。受注者は納期や品質基準を満たすべく、自らコントロールして業務を遂行します。企業はクオリティや進捗状況を管理するためにも、定期的な報告やミーティングを開催します。
5. 業務完了確認
企業は納品報告を受けたら契約書通りの業務が行われたかの確認を行います。修正がある場合は、訂正場所を明確に指示します。
6. 報酬支払い手続き
業務の完了後、契約書の支払い条件に沿って報酬の支払い手続きを行います。
業務委託を活用する際の3つの注意点
ここでは活用する際の注意点について解説します。
- 契約内容を明確にする
- 偽装請負に気を付ける
- 適切な人材を探すのにかかる時間を考慮する
1. 契約内容を明確にする
契約内容に沿って業務が遂行されるため、契約書の内容には細心の注意を払うことが必要です。ケースによって契約内容が変わるため、一般的な契約書の内容をしっかりと押さえておきましょう。
業務契約内容に記載すべき項目は多数あります。どれか一つ欠けても深刻なトラブルに発展する可能性があるため、丁寧に確認しましょう。また、請負契約と準委任契約のどちらを選ぶのかで契約内容は大きく変わってきます。まずは契約の種類を決めてから契約書の作成に取り掛かりましょう。
特に重要なのが、「責任の範囲」です。発注者・受注者ともに責任の範囲を明確にすることで、トラブル回避につながります。
2. 偽装請負に気を付ける
業務委託契約であるにも関わらず、直接具体的な指示や命令を出したり、就業時間の管理をおこなっている場合、偽装請負に該当してしまいます。
業務委託契約書には、請負または準委任契約であることを明記し、発注側が受注側に直接の指示を行わないことを記載しましょう。偽装請負とみなされた場合、職業安定法上の処罰を受けることになってしまうため、注意が必要です。
3. 適切な人材を探すのにかかる時間を考慮する
業務委託を活用しようと思っても、すぐに適切な人材が見つかるとは限りません。特に限られた専門スキルの場合、対象となる人材も少なく、優秀な人はすぐに採用されるため見つけることもできません。探すのに時間がかかることも考慮して、業務委託や副業のマッチングサービスの活用も検討してみましょう。
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企業、人材の両方の面から業務委託を活用するメリットについて解説してきました。正社員を採用することは会社の成長のためにも重要なことではありますが、コスト削減の面やプロジェクトの進行スピードの面からも業務委託を活用することは非常に有効と言えるのではないでしょうか。
メリット、デメリット両方を把握して、積極的に業務委託を利用していきましょう。その中でもエージェントの活用はおすすめです。エージェントは契約書関連の業務を任せられる、適切な人材を探してくれるなど、採用担当者の負担軽減にもなります。
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