デザインマネジメントとは?具体的な業務の例も含めて解説 | フリーランス・業務委託採用|クロスデザイナー

デザインマネジメントとは?具体的な業務の例も含めて解説

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この記事では、デザインマネジメントやデザイン経営の意味、得られるメリットや取り組みに必要な条件などを解説し、デザイン経営を実践する成功企業の事例もご紹介します。

具体的な取り組みについて詳細に解説するので、「デザインを経営資源として捉えるとはどういうことか?」「デザインマネジメントに取り組むためには何が必要か?」といったお悩みのある方は、ぜひ参考にしてください。

デザインマネジメントとは

「デザインマネジメント」とは、経営戦略の観点からデザイン資源を組織的に活用することです。製造部門における製品のデザインや商品企画だけでなく、ブランドやCIの確立、イノベーションの創出への効果が注目されています。

1990年代に「デザイン思考」のビジネスへの応用が開始され、企業価値の向上や革新的な製品やサービスを生み出すための問題解決プロセスとして活用する経営手法が世界に広がりました。

日本では2018年に経済産業省・特許庁が『「デザイン経営」宣⾔』を発表。以降、デザインを経営資源として活用する経営手法への注目度が高まっています。

デザインマネジメントとデザイン経営の関係性については、ソシオメディア株式会社 代表取締役であり、NPO法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net)の理事長を務める篠原稔和氏の著書『人間中心設計におけるマネジメント』(HCDライブラリー/近代科学社)で、以下のように記されています。

「デザイン経営」の意味するところの「デザインを活用した経営手法」については、世界的には「デザインマネジメント」としてその研究と実践が進んでいます。

出典:『人間中心設計におけるマネジメント』(近代科学社)より

次章からは、経済産業省・特許庁の『「デザイン経営」宣⾔』に関する資料に基づいて、デザイン経営について詳しく解説していきます。

デザイン経営とは

「デザイン経営」とは、デザインの領域を意匠・造形・装飾に限定せず、構想・計画・創出も含むと捉え、企業のブランド構築やイノベーション創出にデザインの力を活用する経営⼿法です。

デザイン経営のプロセスでは、ユーザー中心に考えることを本質として、課題を発見し解決策を導き、柔軟に改善と反復を繰り返します。これにより、ブランド構築に資するデザインとイノベーションに資するデザインを通じて、企業の競争力の向上に効果を発揮します。

出典:経済産業省・特許庁『「デザイン経営」宣⾔』より

デザイン経営のメリット

では、デザイン経営に取り組む企業は、どのようなメリットが得られているのでしょうか。

特許庁の『「デザイン経営コンパス」活用ガイド』で紹介されている調査結果で、デザイン経営が定着している中小企業が回答した「デザイン経営による効果」を見ると、「企業のブランド構築やブランド力向上」(69.0%)で最も高く、次いで「魅力ある商品・サービス・事業の創出」(53.1%)「従業員の意欲や自社への愛着心の向上」(51.8%)となっています。また、3割以上の企業に「収益性の向上」(34.0%)や「新市場・販路の開拓」(36.0%)においても効果が見られたことが明らかになりました。

▲出典:中小企業庁「2022年版中小企業白書」 特許庁『「デザイン経営コンパス」活用ガイド』より引用

デザイン経営を実践するには

デザイン経営の必須条件は、経営チームにデザイン責任者がいることと、事業戦略構築の最上流からデザインが関与することです。

この2点を含めて以下のような複数の取り組みを一体的に実践することで、企業のイノベーション力の向上につながります。

①デザイン責任者(CDO、CCO、CXO等)の経営チームへの参画

デザインを企業戦略の中核に関連付け、デザインについて経営メンバーと密なコミュニケーションを取る。

② 事業戦略・製品・サービス開発の最上流からデザインが参画
デザイナーが最上流から計画に参加する。
③ 「デザイン経営」の推進組織の設置
組織図の重要な位置にデザイン部門を位置付け、社内横断でデザインを実施する。
④ デザイン⼿法による顧客の潜在ニーズの発見
観察手法の導入により、顧客の潜在ニーズを発見する。
⑤ アジャイル型開発プロセスの実施
観察・仮説構築・試作・再仮説構築の反復により、質とスピードの両取りを行う。
⑥ 採用および人材の育成
デザイン人材の採用を強化する。また、ビジネス人材やテクノロジー人材に対するデザイン手法の教育を行うことで、デザインマインドを向上させる。

⑦ デザインの結果指標・プロセス指標の設計を工夫

指標作成の難しいデザインについても、観察可能で長期的な企業価値を向上させるための指標策定を試みる。

出典:特許庁『特許庁のデザイン経営の取組み:JPO DESIGN-DRIVEN MANEGEMENT PROJECT』より引用

それぞれ詳しく説明します。

1.デザイン責任者(CDO,CCO,CXO等)の経営チームへの参画

デザイン責任者が経営チームに参画し、デザインを経営戦略に組み込むことで、デザインの力を最大限に引き出します。そのためには、経営チームにデザイン責任者の役割や重要性について理解を得ることや、デザイン経営が企業価値の向上にどのような効果があるかを事例と共に示すことが必要です。

2.事業戦略・製品・サービス開発の最上流からデザインが参画

デザイナーが事業戦略や製品・サービス開発の最上流から参画し、ユーザー中心に考えることで新たな価値を創造します。このように、従来とは異なる手法で問題を発見して解決策を導くためには、デザイン責任者が経営チームに参画して、経営戦略の観点からデザイン資源を組織的に活用し、デザイン思考を組織全体に浸透させることが重要です。

デザイン思考については以下の記事をご覧ください。

関連記事:デザイン思考とは?概要から活用方法をわかりやすく解説|導入するメリットやフレームワークも紹介

3.デザイン経営の推進組織の設置

デザイン経営を推進するための組織を設置するには、推進組織の役割や目的を明確にして、経営チームに設置するメリットを説明して理解を得ることが必要です。そのうえで、推進組織のメンバーを選定し、活動内容や評価基準を設定しましょう。

4.デザイン⼿法による顧客の潜在ニーズの発⾒

デザインの手法を用いてユーザーの潜在ニーズを発見し、フィードバックから検証と改善を繰り返すことで、解決策をブラッシュアップします。

デザインリサーチには、ユーザーの素直な言葉や行動そのものといった数値化できないデータの収集を目的とした定性調査と、数値化することを想定したデータの収集を目的とする定量調査があります。それぞれの代表的な手法は以下の通りです。

定性調査定量調査

・インタビュー

・ユーザビリティテスト

・専門家のユーザビリティ評価

・アンケート

・ホームユーステスト

・アクセス解析

・ABテスト

5.アジャイル型開発プロセスの実施

アジャイル型開発プロセスを採用することで、迅速で柔軟な開発が可能になり、市場ニーズに合わせた製品・サービスを提供できます。そのためには、社内でアジャイル型開発プロセスについて理解を得ることや、人材を確保して環境を整備することが必要です。

6.採⽤および⼈材の育成

デザイン経営に取り組むにあたり、採用においてはデザイン思考を持った人材を選定すると良いでしょう。同時に、デザイン思考を組織全体に浸透させるよう取り組み、人材を育成することも必要です。

また、デザイン⼈材の採⽤を強化し、ビジネス⼈材やテクノロジー⼈材に対してデザインの⼿法を身に着けるためのトレーニングを実施すれば、組織全体のデザインマインドを向上させることにつながります。

もしデザイン人材の採用についてお悩みの場合は、デザイナー専門のエージェントサービス『クロスデザイナー』にご相談ください。以下では、クロスデザイナーに登録いただいている一部の注目デザイナーのリストをダウンロードいただけます。


【お役立ち資料】
法人・クライアント向けデザイナーリスト

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7.デザインの結果指標・プロセス指標の設計を⼯夫

デザインによるクリエイティビティや業績に対する貢献度の定量化や、定性的な価値の言語化を試み、客観的で明確な評価が行えるよう指標を明確にしましょう。それによりデザイン経営の成果を可視化し、経営判断に活用することができます。

関連記事:デザイナー評価項目・方法は?定性的になりがちな人事制度の見直し方

デザインマネジメントの領域とデザイン組織の役割

2023 年に公益財団法⼈⽇本デザイン振興会と株式会社三菱総合研究所が共同で実施した調査結果によると、デザイン経営に積極的な企業ほど、デザイン組織の役割は製品・サービスのデザインといった従来の役割を超えて多岐に渡ることがわかっています。具体的な業務の例は以下の通りです。

・事業や製品・サービスのビジネスモデル全体の設計

・事業や製品・サービスを取り巻く社会やライフスタイルなどへのアプローチ

・製品・サービスのUI/UXの設計

・製品・サービスの広報・ブランディング

・製品・サービスの調達から販売までのサプライチェーンの構築

参考:株式会社三菱総合研究所『デザイン経営はビジネスを強くする』より

一方、デザインマネジメントの主な領域は、デザイン人材の確保や育成、デザイン組織の運営と設備投資、デザインに対する適切な投資などが挙げられます。

しかし、デザイン経営に積極的に取り組むほどデザイン組織の役割が大きくなるため、デザインマネジメントの領域も拡大し、重要性が高まることが予想されます。

▼下記の資料では、デザイン業務の外注とデザイナー採用(内製化)について、コストを中心に比較し、双方のメリット・デメリットを解説しています。無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。


【お役立ち資料】
デザイン外注とデザイナー採用 コスト比較表

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デザイン経営を実践する成功企業の事例

続いて、経済産業省・特許庁の『「デザイン経営」の先行事例』から、デザイン経営を実践する成功企業の事例として、以下の3社の取り組みをご紹介します。

  • マツダ株式会社
  • ソニー株式会社
  • ヤマハ発動機株式会社

参考:経済産業省・特許庁『「デザイン経営」の先行事例

マツダ株式会社

「デザイン経営のメリット」で紹介した調査結果によると、「デザイン経営による効果」では「企業のブランド構築やブランド力向上」がトップに挙げられています。では、デザイン経営により企業ブランド力を向上させるためには、どのように取り組めば良いのでしょうか?

マツダでは従来、個別の商品ごとにデザイン開発を行っていましたが、デザイン経営によりブランド価値の柱の1つにデザインを位置づけ、デザインのビジョンを描き、商品全体に反映させる戦略を策定。そして、エンジニアリングサイドの中長期計画と戦略的な方向性を合致させ、マツダのモノ創りの思想を体現し、個性的で一貫性・継続性を持つブランドとしての統一感ある表現を目指しました。

また、常務執行役がデザイン活用に求めるハードルを常に高いところに置いて深化させ続け、デザインの質の低下を防ぐと共に方向性がブレないようにマネジメントを行っています。

ソニー株式会社

デザイン経営を実践するにあたり、事業戦略・製品・サービス開発の最上流からデザインが参画し、デザインの結果指標・プロセス指標の設計を⼯夫することの重要性はすでに述べた通りです。

ソニーでは、製品開発においてデザイナーが企画段階から携わり、エンジニアと協働することで、エンドユーザーの視点を取り入れることに成功しています。デザインの定量的な効果を測定するものとしては「デザイン賞の件数」「知的財産権の件数」をカウントしていますが、これらが必ずしても製品の価値や競争力に直結して語れるわけではないとして、KPIについては模索し続けています。

また、デザイナーのプロダクトデザイン以外の業務として、ソニーのブランディング全般への貢献があるといいます。

社長直下に事業部横断のデザイン組織であるクリエイティブセンターを設置することで、全事業部における製品デザインの質を担保しています。ソニーのビルのデザイン、CSRレポート、人事の採用活動にもクリエイティブセンターが関わっており、デザイン組織の役割が多岐にわたり、重要性の高さがうかがえます。

ヤマハ発動機株式会社

デザイン経営の必須条件として挙げられていた「デザイン責任者の経営チームへの参画」について、ヤマハ発動機では高い地位の人物がデザイン責任者を務めてハブとなり、デザイナーと技術者、ビジネスマンとアグリゲーターの役割を果たすことで、デザインをコアにおいた協働を進めています。

経営層を説得する際は、定量データではなく、他社事例や社内で何ができるようになるかといった経営層の理解を得やすい情報をもとに、デザインへの投資理由を明確にするスト―リーをもって説明することを重要視しているといいます。

また、このような取り組みによりデザイナーが社内で自由に作業する環境を整えることで、デザインをスムーズに経営全体へ導入することにつながっています。そのうえでデザイン競争力強化の出口としては、「経営への貢献度」「学生の採用」「デザイン賞」「社内アンケート」を指標と設定しています。デザインの結果指標・プロセス指標を設計する際にぜひ参考にしてください。

デザイン経営の採用や育成への影響

「デザインマネジメントの領域とデザイン組織の役割」で紹介した調査結果から、デザイン経営に積極的な企業ほど、デザイン系職種の採用に積極的であることが明らかになりました。

デザイン経営の取り組みに積極的であると回答した企業は、デザイン系職種の採用希望状況について「積極的に採用したい」(33.7%)「一定程度採用したい」(47.4%)と回答しています。また、育成においても約6割がデザイン系職種に対して経営や事業開発を理解してもらうためのビジネス教育を推進し、約5割が非デザイン系職種にデザイン教育を推進していることもわかっています。

参考:株式会社三菱総合研究所『デザイン経営はビジネスを強くする』より

このようにデザイン中心の仕組み作りには、事業戦略・製品・サービス開発の最上流から参画するデザイン人材を、継続的に補完することが必要です。

▼下記の資料では、デザイナーを取り巻く環境や採用のポイントを、わかりやすく簡潔にまとめました。無料でダウンロードできますので、ぜひ貴社の採用活動にお役立てください。


【お役立ち資料】
3分でわかるデザイナー採用

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デザイン経営に取り組むために人材を採用するならクロスデザイナーがおすすめ

本記事では、デザインマネジメントやデザイン経営の意味、得られるメリットや取り組みに必要な条件などを紹介したうえで、具体的な取り組みについて詳細に解説しました。

デザイン経営を実践する成功企業の事例もご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

デザイン経営の必須条件は、経営チームにデザイン責任者がいることと、事業戦略構築の最上流からデザインが関与することであり、デザイン経営に積極的な企業ほど、デザイン系職種の採用に積極的であることがわかっています。

事業戦略・製品・サービス開発の最上流から参画するデザイナーや、継続的にデザイン人材を確保する必要があるにもかかわらず、採用活動にかけられるリソースが限られている場合は、フリーランス専門のエージェントサービスを活用することをおすすめします。

エージェントに条件を伝えるだけで優秀なデザイナーを紹介してもらうことができ、即戦力となるフリーランス人材をスピーディーに採用できるためです。

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曄道 うるは
記事を書いた人
曄道 うるは

Webディレクター&SEOライター。出版業界、広告代理店、IT業界を経てパラレルワーカーに。執筆した記事は500を超える。得意ジャンルはIT、ヘルスケア、金融。座右の銘は「好きを仕事に」。